teratotera

「人と人、街と街とをアートでつなぐ」 中央線沿線地域で展開するアートプロジェクト

TERATOTERA祭り2019 〜選択の不自由〜

シンポジウム/トーク

「TERATOTERA祭り2019」の運営は前年に続いて、ボランティアスタッフTERACCOのコアメンバーが参加する「Teraccollective」が担った。2019年という同時代について語り合うなかで、私たちは暗黙のルールや周囲との関係にとらわれているのではないか、という問題意識が浮かび上がった。そこから「選択の不自由」というテーマにつながった。同じころ、「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が脅迫的な内容を含む批判・非難にさらされ、中断するという事態にいたった。「不自由」への問題意識が期せずしてシンクロすることになった。そうした状況を背景にしつつも、9組の作家がそれぞれのスタンスから「選択の不自由」に向き合い、独自にして多彩な展示が繰り広げられた。

〈コンセプト〉 選択の不自由

今回のテーマを決める話し合いで、Teraccollectiveメンバーの一人が、最近の出来事として、自分が正しいと思っていることを声高に言えないことがあったと口にした。理由は、周囲との関係性だったり、習慣に従わざるを得ない雰囲気があったりしたからということだった。暗黙のルールによって、自由に、心のままに選択ができない状況が語られた。
私たちの日常は、程度の差こそあれ、目の前に現れる選択の連続ともいえる。今の自分は、これまでの選択という点を結んだ線上の最先端に存在している。メンバーが経験したこの不自由な状況は、誰にでも起こりうることだ。
広辞苑で「自由」という言葉を引くと、「自由は一定の前提条件の上で成立しているから、無条件的な絶対の自由は人間にはない。自由は、障害となる条件の除去・緩和によって拡大するから、目的のために自然的・社会的条件を変革することは自由の増大である」と記されている。その意味では、私たちが日々、所与の条件の中で重ねている「選択」は、必ずしも自由ではない。むしろ、かなり不自由なものかもしれない。
この「選択」という行為が、人々の幸福度に影響を与えることを国連の関連団体が発表している「世界幸福度レポート」にも示されている。経済指標だけで見れば上位にあるはずの日本の幸福度は、意外にも低迷している。2012年の調査開始以来、年々下がり、最新の2019年版では156ヵ国中58位と、先進国の中では最低レベルだ。幸福度ランキングは6つの指標から決定されるが、日本の幸福度を押し下げている指標の一つが「人生における選択の自由度」(64位)なのである。
さらに、日本の現状は「選択の不自由」にさらなる拍車をかけてしまっているようにも見える。例えば、政治家の意思を「忖度」した選択によって、スキャンダルでメディアを賑わすことになった官吏は今や珍しくない。国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」では、脅迫的な内容のファクスや電話、メールによって、実行委員会が企画展の中止という苦渋の選択を強いられたことも記憶に新しい。
私たちは現代社会の「選択の不自由」にどう向き合えばいいのだろうか。答えを見つけることはそう簡単なことではない。今回の展覧会では、参加アーティストに来場者が鑑賞する際、何かを選択する仕組みを盛り込んでほしいと依頼した。アーティストはこの投げかけにどのような表現で応え、鑑賞者はその表現にどう向き合うのか。そこから「選択の不自由」をめぐる思考と対話が広がることを期待したい。

Teraccollective

 

▼2019年11月8〜10日に開催した街中でのアート展示の詳細はこちら▼
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▼2019年11月8〜10日に開催したパフォーマンスの詳細はこちら▼
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開催概要

日程: 令和元年11月8日(金)9日(土)、10日(日)11:00〜18:00
会場: JR三鷹駅周辺
参加アーティスト:青木真莉子、うしお、うらあやか、遠藤薫、岡田裕子、前後(神村恵+高嶋晋一)、movingscape連続展 vol.1「乱立する筒」、ヘンリー・タン、李晶玉×鄭梨愛
主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、一般社団法人Ongoing
後援:三鷹市、武蔵野市
協力:HYM(ハモニカ横丁ミタカ)、まちづくり三鷹、三菱地所コミュニティ株式会社

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