古着や不用品を売買するフリーマーケット(flea market)は、日本では「フリマ」として親しまれています。一方、日本語では同じ表記になるので混同されがちですが、「free market」という言葉もあります。経済学の用語で理想的な「自由市場」を意味します。「Really Really Free Market(RRFM)」は、そこに「貨幣からの自由」を加えて、モノだけでなく、スキルやエピソードなどもお金を介することなく交換し、交流する試みです。
シンガポールでRRFM を展開しているグループ「Post-Museum」のジェニファー・ティオを招いて、東京版RRFMを開催しました。図書館であるとともに市民の交流や学習の場でもある武蔵野プレイスとの協働企画です。武蔵野プレイス前の芝生の広場に市民やアーティストが出店したRRFM を中心に、館内の一室でモノを交換する「Tokyo Really ReallyFree Store」、アーティストAokidによる展示やパフォーマンス、市民とともに作り上げたオーケストラ、ティオを交えたトークショーなどが18日間に渡って行われました。(池田佳穂)
《Really Really Free Market》
7月22日(土)15:00~18:00 境南ふれあい広場公園
参加アーティスト:ジェニファー・ティオ、Aokid
夏の照りつける日差しの中、武蔵野プレイス前で「リアリー・リアリー・フリー・マーケット」のメイン企画が開かれました。募集に応じたアーティストやパフォーマー、地元の女性たちなど様々な人々が、芝生の広場に出店し、それぞれのスキルを活かして来場者と交流しました。内容は実に多彩。手芸や占いのブースもあれば、元ヨガ・インストラクターによるヨガ体験会もありました。現役ミュージシャンが来場者の希望に応じて演奏したり、海外でも活動するパントマイムのパフォーマーが来場者とともに即興的な寸劇を撮影したり。お金を介さない交換という新たな「マーケット」を楽しく経験した一日でした。(鶴田真菜)
《Tokyo Really Really Free Store》
7月13日(木)~30日(日) 9:30~22:00 武蔵野プレイス3階 スペースE
アーティスト:ジェニファー・ティオ
「あなたが他人とシェアしたいもの、譲りたいものを置いてください。もしくはあなたが気になるもの、使いたいものを自由に持ち帰れます。」 「フリーストア」の会場に入るとこのようなガイドラインが掲示されている。そこには連日、地域の人々が多種多様な品々を持ち込み、気に入ったものを持ち帰る。剣道の防具からランドセル、高価なグラスから懐かしい玩具、一見ガラクタのようなものまで並ぶ。そういった品々が2、3日後には持ち帰られ、また新しいものが置かれている。そのサイクルの速さに驚いた。 「今日は何が置いてあるの?」と新しい品々を見るために来場する人もいたそう。 お金が介在しない、シンプルなルールだけを定めた空間で、ものがやりとりされた18 日間の「フリーストア」。そこには、ものだけではなく暖かで手触りのある想いも行き交っていた。(池田佳穂)
《コミュニティを築くアートとは》
7月22 日(土)19:00~21:00 武蔵野プレイス4階 フォーラム
ゲスト:ジェニファー・ティオ
シンガポールでReally Really Free Market(RRFM)を2009 年から続けているPost-Museum のジェニファー・ティオをゲストに招いてトークイベントを開催しました。シンガポールと日本のRRFM の違いや、ティオがシンガポールで展開している地域コミュニティをベースにしたプロジェクトについても話をうかがいました。自然体でありつつも芯のある活動ぶりから、プロジェクトを通して様々な垣根を超えたコミュニティを生み出している印象を受けました。2020 年を控えた東京が、シンガポールで展開されているコミュニティプロジェクトから学ぶことがたくさんあるように思えました。(池田佳穂)
《Aokid city meets Musashino Place》
7月13日(木)~30日(日)9:30~22:00 武蔵野プレイス
アーティスト:Aokid
武蔵野プレイスの建築は白く、角が丸みを帯びています。たくさんの窓から入った光が吹き抜けの空間に広がっていく、柔らかい印象の図書館です。
その建物のあちこちに、Aokidのさまざまな作品が潜んでいました。図書館を駆け上がる少年の映像、パフォーマンスでも使われたブルーシートの造形物、そして絵画やドローイング。少年の思いが溢れるような作品が、光があふれる図書館と出会い、幸福な雰囲気が広がる。そんな展覧会でした。(池田佳穂)
《Aokidの海びらき! 〜君はもう泳いでいる〜「初夏Aokidとタップり踊るくんと音符ちゃんむさしのプレイスのうた!」》
7月17日(月)15:00〜16:00, 19:00〜20:00
境南ふれあい広場公園、武蔵野プレイス
「海の日」にあったReally Really Free Marketの関連企画は、Aokidによる屋外パフォーマンスとミニライブの2部構成でした。
第1部「Aokid の海びらき」は、武蔵野プレイス前の広場にブルーシートを敷いて海に見立てました。真夏の晴天の下、Aokid が水着姿で登場。準備運動の後、子供たちとともにブルーシートの上を泳いで、なんとも愛らしい光景を見せてくれました。水泳の後はダンス。夏の定番ソングをBGM として力強くしなやかなダンスで観客を魅了しました。
夕暮れからの第2部は、タップダンサー米澤一平とシンガーソングライターよだまりえとのコラボ。ダンサーの動きやシンガーの歌声に合わせながらパフォーマンスを展開。最後は、Aokidが作詞作曲した「むさしのプレイスのうた」(非公認)を観客とともに合唱し、武蔵境の夏の夜に爽やかな余韻を残しました。(浪江航一)
《むさしのかぜのオーケストラ〜耳をすましてダンスをすれば、さぁコンサートが始まっている〜》
7月27日(木)18:00~20:00 武蔵野プレイス
Aokidの呼びかけで集まったメンバーが武蔵野プレイスを舞台に1日限りの、楽団を結成しました。場所そのもの、人そのものが楽器です。ふだん私達に備わっていながら、十分に使えていない、感覚や身体の部分に意識を集中します。音楽がどんなものか、電子ピアノでまず一人ずつ確かめました。
そして武蔵野プレイス全体の空気を感じながら楽譜を構成。壁を撫でたりはじいたりしながら進むと空気が波のように振動します。手足をダンスのように動かせば、体からリズムが生まれます。
音楽はいよいよ完成間近。賑わいのある1階ロビーを抜けて表に出ると芝生の庭と中央線のホームが見守ってくれているようでした。図書館の利用者の皆さんとAokid と「むさしのプレイスのうた」(Aokid作)を歌ってオーケストラはフィナーレを迎えることができました。
場所が、人がアートになる。集まれば、奏でれば。そんなメッセージを共有してみんなが武蔵野プレイスの一部になれた、記憶に残るイベントでした。(浦夏子)
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