舞台は東小金井駅の高架下にある「コミュニティステーション東小金井」。電車音がBGM となる空間に、「何かが起こる」と予感させる個性的なアーティスト5組が集結しました。そして、「ヒガコ、高架下の夕立」というサブタイトルそのままに夕立とともに2日間にわたる「TERATOTERA SOUND FES.」が始まりました。
声で、楽器で、そして身体全体から発する音は、夏のように刺激的で、高架下を吹き抜ける風のようにさわやかで懐かしく響きます。そこに雷雨音が加わり、高架下のステージを熱く演出しました。(伊藤亜紀子)
Aokid
「あなたのことが大好きでーーす!!」。パフォーマーAokid が叫ぶと、アップテンポの音楽とともに、高架下がプールに変わりました。
ブルーシートのプールに飛び込み、泳ぎ、そして、叫ぶAokid。無邪気な中学生のような海パン男子の身体が、跳ね、弾ける。
それは、夕立の日に優しい詩を読むような、もしくは、かわいいイラストを見るようなパフォーマンス。友達の告白の場面を思い出させるような愛おしさでした。
「TERATOTERA SOUND FES.」は2 日間の日程でしたが、Aokidだけは両日登場し、音楽と身体だけで、高架下を別世界に変貌させました。きっと観客も、彼の「告白」を応援したくなったと思います。(立山周一郎)
センチメンタル岡田
センチメンタル岡田は「ピアノが上手い変態」とも称されているとか。事実はともかく、ピアノの旋律は軽やか。思わずくすっと笑ってしまうような独特の歌詞を載せた曲や、演奏が終わった後も耳に残るようなメロディーの曲を次々と奏でていきます。当日はあいにくの雨模様でしたが、即興的に雨をテーマにした曲を演奏するなど、その場の空気や高架下の雰囲気に合わせて、観客を一体化するような空間を作り上げていました。(清水千恵里)
ラッキーオールドサン
時刻は17時を過ぎ、真夏の大雨が去り、空が夕暮れに染まるころ、「TERATOTERA SOUND FES.」初日のトリを務めるラッキーオールドサンの演奏が始まりました。
ラッキーオールドサンは、ボーカルのナナとギターの篠原良彰のユニット。シンプルな編成で、なにげない日々のなかのドラマを描き出します。その楽曲の世界観が、夕暮れの高架下の空間でくっきりと浮かび上がり、地元の年配の方々にも好評だったようです。彼らがこのイベントで果たした役割は大きかったのではないかと思いました。
個人的には、「魔法のことば」のフレーズ「京王線夏の日」をアドリブで「中央線夏の日」と歌ってもらいたかったなあ、と。(佐久間考彰)
川村美紀子×HIKO
ダンサーの川村美紀子が台車とともに登場し、大量のバケツや灯油タンク、割れたスネアなどを次々とステージに運び込み、ぶちまけました。やがて、手足を縛られたドラマーのHIKOをモノと同様に運び、地面に投げ倒しました。パイプを振り回してHIKOを挑発するように踊る川村。HIKOは身体を捩り悶えながらスティックを手にし、地面に散らばったモノからリズムを生み出す。2人の並外れた能力と感性が激しく共鳴し、接触し即興で展開していくシーンは、暴力と愛情でつながりあう男女の姿にも見えました。数十人に膨れ上がった観客は息をのんで見つめ、会場は緊張感に満ちました。40分間のパフォーマンスが終わり拍手が巻き起こる。そのステージ裏で、血だらけの体を寄せ合って笑う2人の晴れやかな表情が、今も忘れられない。
(遠山尚江)
宇治野宗輝
宇治野宗輝は、大量生産された日用品や家電などの既製品を組み合わせる“ 音の彫刻家” です。DJ機器やアンプやギターといった定番の音楽装置に、ミキサーや卓上ライト、ドライヤーなどを接続し、楽音と生活音を混ぜて爆音にするパフォーマンスを披露しました。
ターンテーブルに合わせて作動するミキサーでバナナシェイクをつくって観客にふるまい、ドリルやギターと合わせて電飾アヒルが光る。音を見て、飲んで、そして聴く。身体のすべてに“ 響く” 作品でした。
(梅澤光由)
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