teratotera

「人と人、街と街とをアートでつなぐ」 中央線沿線地域で展開するアートプロジェクト

TERATOTERA祭り2012@阿佐ヶ谷
What happened on the pool? 岩井優

映像上映

『TERATOTERA祭り2012』は、JR中央線の高円寺・吉祥寺間の各駅周辺をリレー形式で移動しながら開催する大規模な展覧会です。その開幕を飾る高円寺での「オープニングスペシャルライブ!!!」に次いで、22日から9日間、阿佐ヶ谷の屋外プールを会場に現代アートの作品展示プロジェクト「What happened on the pool?」を実施しました。

いつも乗っている中央線車窓の見慣れた市民プールに、見慣れぬ美術作品があったら、通勤途中の会社員、通学途中の大学生や高校生が顔をあげる きっかけになるのでは。
そんな思いから岩井優作品「Floating Life(浮いた生活)」は動き出しました。
 
中央線の車窓から見える屋外プール。こどもたちの声と蝉の音の重なりや入道雲に、季節の移り変わりを覚える光景も、携帯や新聞、雑誌やお化粧に夢中な乗客の視界には入らない。見慣れたと思い込んだものに違う見方を提示してくれる、美術を置いてみたらーー。
 
そんな風に企画は始まった。生半可な構造体を浮かべたところで、風雨による破損の危険性と隣り合わせの9月の展示。作家は修復可能なプランとして、以前カンボジアで見た、水上生活者が水辺で洗濯をする日常の風景を、阿佐ヶ谷のプールで落水しながらも洗濯を続ける群像劇として撮影し、日々変化するインスタレーション作品を提案してくれた。
 
炎天下での設営、撮影中のゲリラ豪雨、苦労して張ったスクリーンがちぎれて落水する絶望感も味わったが、幅広い世代で挑む撮影は一体感も生み、スクリーンを補強しては天気予報を睨む日々が続く。「車窓から作品見られました! 普段は車内で携帯ばかり見ているけど、目線を上げるって大切ですね!」とのtwitterへの反響が励みになった。
 
本編は15分程の映像も、車窓からではせいぜい3‒4 秒。全編を投影する特別上映会すら台風上陸で順延を余儀なくされた。十六夜の月を待って上映を開始すると、平日にも関わらず次々と来場者が訪れた。作品を囲むように思い思いの場所で作品に
見入る人々で、気づけばプールサイドは埋め尽くされている。中央線の走る音、鈴虫の輪唱、羽衣のように風にひるがえるスクリーン、映像が発する胎動のような水中音、水面を渡る風が9面のモザイク状の映像と一体になり、一大インスタレーションが完成した。映像の放つ光にぼんやり照らされながら、息を詰めて作品に見入る人々の姿も本当に美しく、上映会の終わりを告げるのが心苦しくさえ思われた。
 
今、プールはいつもの姿を取り戻している。どれだけの人が目撃したかわからない光景が、車窓を見やるきっかけになっていることを祈るばかりである。(脇屋佐起子)

開催概要

日時:2012年9月22日(土)〜9月30日(日)18:00〜20:00
会場:阿佐谷けやき公園プール
アーティスト:岩井優

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