teratotera

「人と人、街と街とをアートでつなぐ」 中央線沿線地域で展開するアートプロジェクト

踊り念仏

パフォーマンス

商店街を裸足で歩く人や二人三脚でもたれあうように進む二人組、たたずんでひたすら店の看板を見つめ続ける人……。多くの人々が行き交う真夏の阿佐ヶ谷の街に、そっとイブツ(異物)たちが出現した。通行人はときおりイブツたちに怪訝なまなざしを向けながらも、足を止めることもなく通り過ぎていく。街を舞台とした演劇的パフォーマンス『踊り念仏』は、そんなふうにさりげなく始まり、30分後、何事もなかったかのように終わった。

「踊り念仏」は、太鼓や鐘を叩いて踊り、念仏を唱えて遊行する宗教的行事。平安時代中期に始まり、一部は現代まで宗教的行事として伝わったが、多くは室町時代までに民俗芸能と化した。民俗芸能に関心の深い武田力は、この「踊り念仏」を読み換えて、主体的に街と関わろうとする行為そのものを「踊る」と呼ぶ。これまでも大阪や神奈川の街頭で実施してきた。

現代では、デモをするには警察に届け出る必要があるように、街頭での行為には(暗黙のものも含めて)さまざまな規制やルールがある。それらを武田は「街の条件」と呼び、それぞれの街の条件を事前にリサーチする。公募に応じた参加者たちは、武田から阿佐ヶ谷の「街の条件」の説明を受けたうえで、それぞれの解釈にしたがって、街頭でパフォーマンスを繰り広げた。

その後、参加者同士でなぜそのイブツを演じてみたのか、周りからどのように見られ、それをどう感じたのかなどの感想を共有。武田からは、過去に踊り念仏を行った際の街の条件についても説明があった。そうした「振り返り」を通して参加者は、歴史的背景や抱えている社会的な課題によって、それぞれの街の条件が「デザイン」されていることに気づかされた。

現代社会では、「普通」であることが暗黙裏に要請される。そのなかで、「普通とは違ったもの=イブツ」を演じることで、自分の中の「当たり前」が揺らぎ、いつも歩いている街がどこか違う相貌を現す。ときには、通行人すべてがイブツに見える感覚に陥ることも。ふるまうべき態度が外部から恣意的に規定されている街に、自分はどのように関わっていきたいのだろう。風船を持って商店街を疾走するイブツをみて、ふと考えさせられた。 (浪江航一)

開催概要

2018年8月18日(土)17:00~19:00
開催場所:スターロード商店街
アーティスト:武田力

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