teratotera

「人と人、街と街とをアートでつなぐ」 中央線沿線地域で展開するアートプロジェクト

西荻映像祭2016
-あなたとわたしの間のこと-

展示

「西荻映像祭2016」では、新進気鋭のアーティスト3 組が、西荻窪駅周辺の店舗を舞台に作品をつくり、各店舗で3 日間限りの上映会を開催しました。参加アーティストは、林千歩、秋山由希、キュンチョメ。今回は「あなたとわたしの間のこと」をテーマに、個人の空想、人と人との間に生まれる感情や関わり、そして社会の中の個人など、わたしたちを取り巻く関係性を探りました。
店舗とアーティストの出会いから生まれた作品は、日常に新たな色彩を加え、わたしたちを現実と空想の狭間へ誘いました。(髙村瑞世)

 

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林千歩《林千歩劇場 『崖の上のティボリ』編》
林千歩は、創業85 年の歴史をもつ「ビリヤード山崎」を舞台に重層的な作品を制作・上映しました。セクシーな女店主によるビリヤードのレクチャーと思い出語り、作家の幼少期の記憶をもとにした神木ティボリをめぐる指人形劇、ビリヤード台を囲み黙々と指人形劇を演じる人々、そしてクモがイモ虫を捕食する虫の世界。これら異なる世界が交錯し虚構と現実が入り混じります。
中心となる指人形劇は、神木ティボリを愛する裸の男が肉や衣服を得て、女に出会う創世神話のような物語です。指人形劇に限らず、中にはエロスや男女といった起源を象徴するモティーフが散りばめられています。しかしそこからは、生殖という創世に不可欠の展開が脱落しているようです。
神話や歴史の舞台に個人的な思い出や欲望を置くことで、自身をとりまく世界の成り立ちを問い直す作品なのかもしれません。(榎戸杏子)

 

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秋山由希《私がここにいない理由》
「西荻映像祭」への参加は2013 年に続いて2 回目となる秋山由希。制作前に何度か「旅の本屋のまど」に足を運び、構想を練りました。映像は「のまど」の日常的な場面から始まります。定点カメラで、よく見ると店主が微動している程度の映像が20 分ほど続き、その後、地球儀がクローズアップされ始め、棚から本が消え去っていきます。空虚な店内の映像に変わり、様々な土地の風景と本を音読する声が入り交じります。
映像を通じて、店主がここにいる意味や役割を再認識させられるとともに、「のまど」で本を手に取り、旅を追体験する時のような感覚を呼び起こす作品となりました。(吉田絵美)

 

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キュンチョメ《針と糸と》
「フジクリーニング」のらせん状の階段を上った先は薄暗い空間。そこに投映されるのは、数人が1つの針に赤い糸を通そうとする指の動きです。時に攻撃的になったり時に助け合ったりする指先。その主は性別も国籍も分かりません。
「針と糸」に描かれるのは、対立と協調、そして針に糸が通ったという達成感の繰り返しです。
次に目に入るのは、「運命のリサイクル」という名のガチャガチャ。出てきたプラスチック球の中身は、リサイクルのおみくじ。一喜一憂が待ち受けます。
さらに奥まったスペースには、長い間忘れられていた鯉のぼりをスーツにして身にまとい、空中へダイブする映像「僕と鯉のぼり」。かつて夢を託された鯉のぼりは空の中で再び息を吹き返したようです。キュンチョメが独自の感性で追求している作品に、観ている人もいつしか思索の海に引き込まれてしまいます。(三浦留美)

開催概要

日程:2016年9月9日(金)、10日(土)、11日(日)18:00 〜22:00
会場:ビリヤード山崎、旅の本屋のまど、フジクリーニング
参加アーティスト:秋山由希、キュンチョメ、林千歩

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