TERATOTERA 祭り2016 のテーマは「involve」。「包摂する」「巻き込む」といった意味です。そこから作家たちは「観客を何らかの形で巻き込む」展示を目指しました。街なかの公園にカッパがたむろし、喫茶店の扉を開ければホストクラブがある。そんな非日常な空間が突如出現しました。観客は会場をめぐるたびに、それぞれの作家が提示する様々な価値観と出会ってしまう。驚きや気づきを通して、観客は自分の生活を別の角度からみる機会を得たかもしれません。(池田佳穂)
意見の異なる人間同士でも、話し合えばお互いを分かり合うことができると小さい頃はどこかで信じていた。たとえ全く話の通じない相手に出会ったとしてもその人とは距離を置いたり相手にしなければいいのだとも。でも現実はそう簡単ではないことがようやく最近になってわかってきた気がする。
世界中で止むことのないテロ、解決策が見えない難民や移民問題、イギリスのEU 離脱やトランプ大統領の就任なんてのも記憶に新しい。国内に目を向ければ、数年前に破滅的な状況を招いた原発は日本中で再稼動の準備が進み、それを推し進める政党の支持率は概ね安泰のようだ。
こうした現実に直面する中、私だけでなく、多くの人々は気付き始めている、あるいはとっくに気付いているはずだ。私たちは価値観の異なる他者に囲まれて生きているのだと。
では、そうした他者に距離を置き、自分自身の価値観の中だけで生きていくことはできるのだろうか。答えはもちろんNO であろう。特定の他者と関係を絶つことのできる逃げ場なんてこの世界にはもうどこにもないのだから。
今年のTERATOTERA 祭りでは、『Involve – 価値観の異なる他者と生きる術-』というテーマを掲げている。アートは多様な価値観を担保するものと言われて久しいが、本当にそうした機能を持つのであれば、私たちがこの現実世界で直面せざるを得ない、価値観の異なる他者と生きていくためのヒントが沢山詰まっているはずだ。
「Involve」とは「巻き込む、巻き添えにする」という意味の言葉であり、今回の展示作家には、観客を自らの作品に何らかの形で巻き込んでいって欲しいと伝えた。距離を置くことも無視することも許さないアート作品は、価値観の異なる他者と生きる術を私たちに与えてくれるのだろうか。本展は現代社会におけるアートの存在価値を問う挑戦でもある。
ディレクター 小川希
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